一晩絶食させたマウスを以下2つの試験に供した。
① 3種の試験食を糖質摂取の事前(30分前)に投与する。
② 3種の試験食を糖質摂取と同時に投与する。
それぞれ糖質摂取後、0分・15分・30分・45分・60分・90分・120分時に採血(事前投与は30分前にも採血)し、血糖値およびインスリン値を測定。
アーモンドは、食後血糖値の上昇を抑制することが知られている。しかし、もっとも「適切なタイミング」やその「機能成分」に関する報告はなされていない。江崎グリコでは、将来のヒト臨床試験も見据えながら、マウスを用いた動物実験でその詳細を分析した。
【被験体】ICRマウス(オス・6〜8週齢)
【試験食】
3種の試験食を用意
① 皮つきローストアーモンドペースト水溶液(4g/kg)
② 難消化性デキストリン(0.4g/kg)
③ 蒸留水(対照)
【糖質】市販デキストリン
■試験方法一晩絶食させたマウスを以下2つの試験に供した。
① 3種の試験食を糖質摂取の事前(30分前)に投与する。
② 3種の試験食を糖質摂取と同時に投与する。
それぞれ糖質摂取後、0分・15分・30分・45分・60分・90分・120分時に採血(事前投与は30分前にも採血)し、血糖値およびインスリン値を測定。
[試験結果] 食後血糖値上昇を抑制する「アーモンドを摂取するタイミング」
下のグラフは、一晩絶食させたマウスに対して、タイミングを変えて3種の試験食(①皮つきローストアーモンドペースト水溶液(4 g/kg) ②難消化性デキストリン(0.4 g/kg) ③蒸留水(対照))を投与した場合の、糖質摂取後の血糖値に与える影響を検証したもの。試験食投与タイミングとして、以下2種類を設定。
①試験食を糖質摂取の事前(30分前)に投与 ②試験食を糖質摂取と同時に投与。糖質として市販のデキストリンを1 g/kgで摂取させ、糖質摂取後、0分・15分・30分・45分・60分・90分・120分で採血し、血糖値の変化を検証した。(事前投与は30分前も測定)。
■事前アーモンド投与時の糖質摂取後 120分間の血糖値推移 |
■同時アーモンド投与時の糖質摂取後 120分間の血糖値推移 |
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事前に試験食を投与した場合は、アーモンドペースト投与群と蒸留水(対照)投与群との間には、糖質摂取後の血糖値推移に大きな差異は認められなかった。
しかし、同時に試験食を投与した場合は、アーモンドペースト投与群において、蒸留水(対照)投与群に比べて、15分および30分後の血糖値が有意に低下した。
また、血糖値を低下させる作用を持つ血中のインスリン値を分析した(下グラフ)。アーモンドペースト投与群のインスリン値は、蒸留水(対照)投与群と比較して、投与15分後に有意に高値を示した。
【糖質摂取30分前のアーモンド摂取】食後血糖値上昇は対照群と同程度
【糖質摂取と同時のアーモンド摂取】食後血糖値上昇は低下、インスリンの分泌も促進
もっとも効率よく食後血糖値上昇を抑制する「アーモンド摂取のタイミング」を検証したうえで、次は食後血糖値上昇を抑制する「アーモンドの機能成分」についても検証するために、同様の動物実験を行った。
【被験体】ICRマウス(オス・6〜8週齢)
【試験食】
機能成分を特定するため、以下の試験食を用意 ※いずれのペーストもローストアーモンドをペースト化したもの
① 皮つきアーモンドペーストと皮なしアーモンドペースト
② 皮つきアーモンドペーストを遠心分離し分画した、3種の分画成分(①不溶性 ②水溶性 ③オイル)
■試験方法
一晩絶食させたマウスに、試験食を糖質摂取と同時に投与。
それぞれ糖質摂取後、0分・15分・30分・45分・60分・90分・120分時に採血し、血糖値およびインスリン値を測定
[試験結果] 食後血糖値上昇を抑制する「アーモンドの機能成分」
下の二つのグラフは、皮つきと皮なしアーモンドを投与した後の120分間の血糖値および血中インスリン値の推移を示している。
血糖値については、皮つき群および皮なし群両群において、蒸留水(対照)投与群と比較して、投与15分後に(皮つき群では、加えて30分後にも)有意に低値を示した。
血中インスリン値については、皮つき群および皮なし群両群において、蒸留水(対照)投与群と比較して、総じて有意に高値を示した(インスリンの分泌が促進された)。
■試験食および糖質投与後 120分間の血糖値推移 |
■試験食および糖質投与後 120分間の血中インスリン濃度推移 |
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[試験結果] 食後血糖値上昇を抑制する「アーモンドの機能成分」
また、3種の分画成分(①不溶性 ②水溶性 ③オイル)の比較においても、糖質摂取後120分間の血糖値および血中インスリン値を測定した。
血糖値については、オイル画分で、蒸留水(対照)投与群と比較し、投与15分後に有意に低値を示した。
しかし、血中インスリン値については、血糖値では抑制効果がみられたオイル画分においても、蒸留水(対照)投与群との差は認められなかった(画分の違いによるインスリン分泌への影響はない)。
■試験食および糖質投与後 120分間の血糖値推移 |
■試験食および糖質投与後 120分間の血中インスリン濃度推移 |
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【皮つき・皮なしの違いによる効果の違い】
皮の有無にかかわらず、
食後血糖値上昇の抑制&インスリン値の高値が
認められた。
(いずれもインスリンの分泌を促進し、
血糖値上昇を抑制する)
【分画成分による効果の違い】
アーモンドオイルが食後血糖値上昇を
有意に低下させた。
しかし、血中インスリン値は
他群との差は認められなかった。
(血糖値上昇は抑制されるが、
インスリンの分泌には作用しない)
Study1とStudy2の実験結果を通じて、以下の2つの考察が導き出される。
※参考 江崎グリコのアーモンド研究の今後
今回の動物実験では、「食後血糖値の上昇を抑制するためにもっとも効率的なアーモンド摂取のタイミング」と「食後血糖値の上昇を抑制する機能成分」について検証がなされた。今後は、ヒトでの臨床試験に向け、「機能成分の有効量の検討」や「他のナッツ類オイルとの比較」を実施する予定である。これらの結果を学会や論文で発表しながら、同時に事業化や商品化の可能性も追求していく。