初期むし歯の再結晶化を促す POs-Ca(リン酸化オリゴ糖カルシウム)初期むし歯の再結晶化を促す POs-Ca(リン酸化オリゴ糖カルシウム)

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実証
リン酸化オリゴ糖カルシウムとフッ化物の組み合わせは再石灰化を促進する!

フッ化物と虫歯予防
フッ化物のはたらき

一般的にむし歯予防に効果的であるといわれているフッ化物は以下のような特徴がある。

  • ① フッ化物はカルシウムによる歯の再石灰化を促進する。
  • ② 酸性の環境でも、再石灰化を進めることができる。
  • ③ むし歯に強い歯をつくる。

歯の再石灰化を進めるには、だ液中のフッ化物濃度が最低でも0.1ppm必要であるといわれている。
たとえば、海外などでは水道水に1ppmのフッ化物を添加すること(フロリデーション※)によって、むし歯予防に大きな効果をあげている。これは特にフッ化物配合のセルフケア剤(歯磨きなど)が普及していない地域で効果的だ。

※フロリデーション
水道水などのフッ化物濃度をむし歯予防に適切な濃度に調整することをフロリデーションと呼ぶ。実際には、フッ化物濃度が1ppmになるように水道水にフッ化物を添加すること。

一般的なフッ化物配合(=フッ素配合)の歯磨き剤には900ppm程度のフッ化物が配合されている。 また、歯科医院でむし歯予防として行われるフッ化物塗布では、9,000ppmという高濃度のフッ化物を含む薬剤が用いられている。永久歯が生え揃う中学生くらいまでに年数回フッ化物塗布を行うと、むし歯予防に効果的とされている。
このように、使い方によってフッ化物の濃度が設定される。

実験①

リン酸化オリゴ糖カルシウムを含む再石灰化液に、フッ化物として緑茶エキスをそれぞれ0、0.5、1.0、10、100ppm (ppmは100万分の1を表す単位) になるように加えて37℃で24時間、エナメル質片の再石灰化を行った。その後、エナメル質片をTMR法で解析して再石灰化率を算出した。(リン酸化オリゴ糖カルシウムの濃度は、再石灰化に最適な0.36%)

緑茶エキスについて一般に、茶葉から抽出した緑茶の中にはフッ素が0.5〜0.9ppmほど含まれている。しかし、そのままではフッ素が緑茶中のタンニンなどと結びついていて、歯の再石灰化に使用しにくい形となっている。そのため、緑茶抽出物からタンニンなどを取り除いた緑茶エキスをフッ素源として使用した。


実験①結果

TMRにより再石灰化率を計算した結果、フッ化物を添加することでエナメル質の再石灰化率が変化することがわかった。リン酸化オリゴ糖カルシウムとフッ化物の組み合わせによる再石灰化促進効果が確認できた。フッ化物が0.5-1.0ppm存在するときには再石灰化が促進されたが、フッ化物の濃度が高いと逆に再石灰化を阻害することがわかった。

実験②

リン酸化オリゴ糖カルシウム溶液0.36%と緑茶エキス0.5ppmを含む再石灰化溶液に脱灰エナメル質を浸漬し、エナメル質の再石灰化を行った。 再石灰化したエナメル質を研磨シートで削って粉末化し、フォトンファクトリー(茨城県つくば市)にてXAFSスペクトルを測定した。

XAFS法とは試料にX線のエネルギーを変えながら放射し、その入射・強度により解析する方法。今回は、フッ素原子の蛍光X線を得るのに最適な大型施設フォトンファクトリー(茨城県つくば市)で測定実験を行った。


実験②結果

XAFSにより得られたスペクトルを比較した結果、再石灰化処理前の脱灰エナメル質に比べて、再石灰化処理後のエナメル質ではフッ化物の存在を裏付けるピークが観察された。フッ素が単純に沈殿するとフッ化カルシウムに、歯に取り込まれるとフッ化アパタイトとなることが予想。再石灰化処理後のエナメル質の波形をフッ化カルシウム、フッ化アパタイトの波形と比較した結果、再石灰化によってフッ素が歯に取り込まれ、歯のエナメル質の一部がフッ化アパタイトになっていることがわかった。

※フッ化アパタイトは、歯のもともとの成分であるハイドロキシアパタイトと比べ、酸に強く脱灰しにくいことが知られている。

まとめ

リン酸化オリゴ糖カルシウムとともに再石灰化に使われたフッ化物は、低濃度でもエナメル質に取り込まれ、歯の一部となっていることがわかった。